ユダヤ的叡智の系譜 タルムード文化論序説

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ユダヤ教徒は神殿も聖地も失い、離散してなお信仰を守り、生き延び、さまざまな活動の足跡を歴史上に残すことがなぜできたのか。
ラビ・ユダヤ教の成立と展開、ユダヤ人の歴史を貫いて行われてきた神の啓示の学習「タルムード・トーラー」の意義から考える。

主要目次
序 信仰に徹することと啓蒙ということ

第一部 ラビ・ユダヤ教の成立とタルムード学の形成

第一章 宗教と教育──タルムード学の意義と批判精神の育成
 はじめに──学問的理念から見た比較宗教文化
 1 歴史的俯瞰からの問題提起
 2 ラビ・ユダヤ教の理念と学問 
 3 タルムードの方法学 
 おわりに──神への愛による批判精神の育成 

第二章 一神教と〈戒〉──ユダヤ教的特徴
 はじめに──戒律と宗教文化への視点
 1 ラビ・ユダヤ教の戒律の意義 
 2 戒律の対象としての人間の思いと行い 
 3 口伝トーラー・ミシュナの法体系と事物の分類 
 4 戒律の目指すもの 
 5 ラビ・ユダヤ教の文化の「型」 

第三章 神殿供犠から啓示法へ──ユダヤ・アイデンティティの確立
 1 唯一神教の二つの流れ 
 2 ユダヤ教とイスラームの相互影響 
 3 自己定義する宗教の出現 
 4 宗教共同体の構成要素としての動物供犠の意義 
 5 神殿供犠が啓示法に包摂される過程 
 6 宗教共同体としての再生の青写真 
 7 ローマ帝国とユダヤ共同体における国家と宗教の関係 
 おわりに 

第四章 タルムードの聖書解釈に込められたユダヤ賢者の実存的関心
 はじめに 
 1 レヴィナスに学ぶタルムードの特徴 
 2 イスラエルの民の契約締結は強制か自発的か 
 3 ラヴァとはだれか 
 おわりに 

第五章 タルムード学の系譜──中世の学問的成熟
 はじめに 
 1 ゲオニーム時代と知のあり方 
 2 北アフリカ 
 3 ムスリム・スペイン 
 4 アルプス・ピレネー以北 
 5 キリスト教スペイン 
 6 スペインからツファト(サファド)へ 
 7 ポーランドのアシュケナジーム 

第二部 タルムード学の成立とユダヤ的生活様式の実現

第六章 タルムードのテキストを読む──子に対する親の義務
 1 テキストの構成 
 2 子弟の教育に関するタルムードの議論 
 3 律法典の形成 
 おわりに 

第七章 貧しさの中の感謝──ユダヤ教の食と祭礼
 はじめに──ユダヤ教は食をどう扱ってきたか 
 1 トーラーに従って生きるということ──ユダヤ教の根幹 
 2 トーラーに込められた食の意味と実践──口伝トーラーに学ぶ 
 3 食の戒律の発想法 
 4 中世の律法典における食の位置づけ 
 おわりに 

第八章 ユダヤ教の経済観念──正しい道理の富
 はじめに
 1 近代ユダヤ人の経済的資質と宗教 
 2 「平日のユダヤ人」のブルジョア的経済観念 
 3 ユダヤ法ハラハーの経済観念 
 4 離散ユダヤ社会の環境要因 
 おわりに 

第九章 ユダヤ教の霊魂観──人間としての完成と戒律
 はじめに 
 1 ユダヤ教の日常的な意識と観念 
 2 死後の魂と死者の復活 
 3 殉教と人命 
 4 人間の成長と魂の完成 
 おわりに 

第一〇章 悔い改めと和解──他者に対する罪の赦し
 はじめに 
 1 共生に対するユダヤ教的枠組み 
 2 ヤコブの悔い改めと和解に関する創世記注解 
 3 悔い改めと贖罪に関するミシュナの規定 
 4 グマラの論争 
 5 コラとその仲間の争いと和解の可能性 
 おわりに
 
第三部 近代タルムード学とユダヤ・アイデンティティの葛藤

第一一章 レヴィナスとリトアニアのタルムード学の意義
 はじめに 
 1 レヴィナスとタルムード研究の伝統 
 2 ヘブライズム概念の再考──ユダヤ人解放からの系譜 
 3 リトアニア系イェシヴァにおけるタルムードの「生きた伝統」 
 おわりに──レヴィナスの訴え 

第一二章 ギリシアとの相克としてのユダヤ教史
 1 ユダヤ教史の文脈におけるタルムードの位置づけ 
 2 同化ユダヤ人とギリシア的学問 
 3 レヴィナスにとってのタルムード学の特徴 
 4 偶像崇拝との闘争としての批判精神 
 5 タルムード学の理念と方法 
 6 学問の対象の限定──ギリシア的学問への憧憬と忌避 
 おわりに 

第一三章 ユダヤ教正統主義におけるコスモスとアンチコスモス
 1 井筒俊彦の神秘思想論 
 2 ユダヤ教正統主義における人間と唯一神との関係 
 3 自我滅却の精神態度に向けた戒律の学習と実践 
 4 ユダヤ教正統主義の創造世界観 

第一四章 ユダヤ教正統主義から考える現代の国家・宗教関係
 1 近代国家建設と「ユダヤ教の政教分離」 
 2 イスラエルという国家をめぐる問い 
 3 ラビ・ユダヤ教の国家・社会論 
 4 ユダヤ教神学が直面した三つの選択肢 
 5 ユダヤ教正統主義から見た現代イスラエル国家の意義 

第一五章 ユダヤ教の現代メシア論──ショーレムとレヴィナスの対話
 1 近代ユダヤ人のアイデンティティをめぐって 
 2 ゲルショム・ショーレムとそのメシア論 
 3 エマニュエル・レヴィナスとそのメシア論 
 おわりに
 
第一六章 リトアニア系イェシヴァの精神を体現した四人の現代タルムード賢者
 1 近代ユダヤ教にイェシヴァが果たした役割 
 2 リトアニア系イェシヴァの教育理念 
 3 リトアニアのタルムード四天王と七つの学塾 
 4 リトアニア系イェシヴァの歴史的影響力 

結語──ユダヤ人の歴史を貫くもの
 1 ユダイズムの形成とヘレニズムの影響 
 2 近代リトアニアのタルムード学の復活 
 3 リトアニアのユダヤ三博士 
 4 東欧のタルムード四天王 

あとがき 

著者:市川 裕

ISBN978-4-13-016044-5

2022年04月01日

判型:A5
ページ数:468頁

出版:東京大学出版社

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6,050円(本体5,500円、税550円)

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