内村鑑三 再臨の風景: 臨りつつあるイエスと生命の水の河
本書は、日本近代の無教会信仰者、伝道者である内村鑑三の福音の中心、聖書の奥義となる「再臨信仰」に関する研究である。それはまた、この戦争の新世紀のなかで、ときに旧約の風前の籾殻(もみがら)の如くに生きる、人の救済への途をたどる文学・批評的な考察でもある。
旧約の森と再臨宇宙をプロローグに、ドストエフスキー文学のニヒリストの系譜、新約の罪と愛をめぐるユダとイエスの物語、神の国と地上の国、インマヌエルと再臨、非戦論ととともにある内村鑑三の再臨信仰への途、大正期の再臨運動、再臨のキリストと臨(きた)りつつあるイエスを経て、エピローグに生命(いのち)の水の河の辺(ほとり)へと至りつく。
その永遠に涸れることのない一条(ひとすじ)の河は、創世記の原初の楽園を潤したその源(みなもと)から、旧約の幾重もの歴史の地層を通り、イエスとともにはじまる新約の福音書、パウロなどの信仰書簡からヨハネ黙示録の新しい天地、都の大路の中央まで途絶えることなく流れている。そこには臨りつつあるイエスとともに、万人救済=再臨の風景が広がり、生命の水音が響く希望の物語がある。
著者:小林 孝𠮷
1953年、長野県生まれ。文芸評論家。明治学院大学キリスト教研究所協力研究員。「千年紀文学」編集人。明治学院大学文学部卒業。博士(学術、九州大学)。日本社会文学会、日本キリスト教文学会会員。NPO法人滝沢克己協会理事長、NPO法人今井館教友会監事。
〈著書〉
『椎名麟三論 回心の瞬間』(菁柿堂、1992年)、『記憶と文学――「グラウンド・ゼロ」から未来へ』(御茶の水書房、2003年)、『島田雅彦――〈恋物語〉の誕生』(勉誠出版、2010年)、『銀河の光 修羅の闇――西川徹郎の俳句宇宙』(茜屋書店、2010年)、『埴谷雄高『死靈』論――夢と虹』(御茶の水書房、2012年)、『椎名麟三の文学と希望――キリスト教文学の誕生』(菁柿堂、2014年)、『内村鑑三――私は一基督者である』(御茶の水書房、2016年、第3回西川徹郎文學館賞)、『原発と原爆の文学――ポスト・フクシマの希望』(菁柿堂、2016年)、『内村鑑三の聖書講解――神の言のコスモスと再臨信仰』(教文館、2020年)、ほか多数。
出版社 : 九州大学出版会 (2025/3/12)
内村鑑三 再臨の風景: 臨りつつあるイエスと生命の水の河
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