並木浩一著作集3 旧約聖書の水脈
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日本を代表する旧約学者の集大成、旧約聖書が今語りかけるものとは
種々の文書の寄せ集めと思える旧約聖書には、しかし、それを貫く流れがある。著者は、モーセの生涯や、預言者たちの批判と幻、雅歌が伝える愛と喜び等に注目しつつ、この沃土を育んだ「水脈」を追う。旧約聖書は現代に意味を持つのか、この渾身の問いが迫ってくる。
【目次】
まえがき
第一部 旧約聖書の源流
1 モーセ とりなしの愛
一 イスラエル宗教と歩みを共にするモーセ像
二 「金の子牛」事件とモーセ
三 加筆層への若干のコメント
四 モーセのとりなしの愛
2 古代イスラエルにおける契約思想
一 古代的契約とイスラエル
二 ヤハウェ契約の歴史的展開とその特色
第二部 預言者的精神の展開
1 古代イスラエルの預言者
一 イスラエル預言者のポートレート
二 預言者の出現と活動を外から見る
付論 預言者における契約の表現
2 預言の伝統と変容
まえがき この論文の成り立ちと意図
一 イザヤが見据えた歴史的現実と信仰の立場
二 預言の変容と黙示の特色
3 預言者的終末論と黙示
──旧新約合同学会での二つの発題に寄せて
一 木田献一氏の発題について
二 佐藤研氏の発題について
4 メシアニズム・その過去と現在
はじめに
一 モーヴィンケル『来たるべき者』におけるメシア観の考察
二 モーヴィンケルの所論に対する批評
三 ユダヤ思想におけるメシアニズムの問題
第三部 一神教の感覚
1 人称を持つ神と人間
一 人称的世界・人格的世界
二 聖書における神の人格
三 日本人の人称
2 旧約時代における多神教と一神教
──現代の課題との関わりにおける再評価
一 一神教/多神教を根基に遡って理解する
二 一神教に対する外部からの批判と旧約聖書の読み方について
三 キリスト教の内側からの批判について
四 日本的な多神教世界(原多神教)のモラル感覚を問う
五 ユダヤ教が打ち出した一神教の三類型
六 一神教の三類型を評価する
3 旧約聖書形成期に見る一神教の三類型
一 発題の意図
二 モルトマンによる「原一神教批判」
三 類型A 〈申命記/申命記主義的一神教〉
四 類型B 〈預言者的な一神教〉
五 類型C 〈人類史的な一神教〉
六 三類型の評価
第四部 神の導きのもとでの人間
1 創世記が描く人、民族、人類
一 創世記の課題提起と構想
二 原初史における読解作業
三 神話的発想を批判する原初史(創一─一一章)
四 天体を非神格化する創造物語
五 神の似像に従って造られた人間
六 生物の共生を求める創造記事
七 実践的な創造論を評価する現代の神学
八 創世記二─三章に描かれた人間たち
九 イスラエル民族史に先行する人類史
十 アブラハムの召命と現実
2 雅歌 牧歌の伝統を革新する愛の表現
一 「パストラル」という文化現象
二 「牧歌」におけるパストラルなものの展開の諸相
三 旧約聖書における牧歌的世界への対応の概観
四 エジプトにおける「愛の歌」の特色とその影響
五 雅歌の考察
3 聖書の時代の旅人たち
初出一覧/あとがき/聖句索引
著者:並木浩一
出版:日本キリスト教団出版局
並木浩一著作集3 旧約聖書の水脈