ヤコブと放蕩息子
イエスは旧約聖書のヤコブ物語を、放蕩息子の譬え話へと改変している。
イエスはどのような意図をもってどのように放蕩息子の物語を作り変えているのか?
中近東出身の神学者が、中近東の伝統の光に照らしながら、ふたつの物語を比較研究する。
神学者イエスに迫る新しい試みに、興味が掻き立てられる。
「四福音書に現れるイエスは、聖書の伝承を自家薬籠中のものにしたうえで、彼自身の人格に焦点を合わせた新たなビジョンを提示することによってそれをつくり直す神学者であります。本書はイエスがヤコブ伝説をとりあげ、自分を中心にすえて構成した新しい物語のなかで、それについてどのような省察をめぐらすかを注意深く吟味することを意図します。」(本文より)
[目次]
第1部 序説──イエスを神学者と呼ぶことはなにを意味するか(隠喩で語る神学者イエスとラビ的世界/イエス伝承とその真正性の問題/放蕩息子の譬え話とルカ福音書における「旅物語」 ほか)
第2部 ルカ福音書一五章の放蕩息子の譬え話と創世記二七-三五章のヤコブ伝説との比較──ルカ一五章の構造(三つの物語、ひとつの譬え話/失われた一匹の羊の譬え話 ほか)
第3部 ルカ福音書一五章の放蕩息子の譬え話と創世記二七-三五章のヤコブ伝説との比較──伝説と譬え話:類似性と対照的差異(ヤコブ再訪/大反逆/流浪 ほか)
第4部 この研究がイエスの神学の理解にとってはらんでいる意義(イエスの神学の諸相を明らかにするうえで、ヤコブと放蕩息子の比較研究がはらんでいる意義の要約)
結論
付論 ヤコブ伝説と放蕩息子の譬え話とのあいだに見いだされる様々なタイプの対照的差異と類似性の索引
著者:ケネス・E・ベイリー
訳者:森泉弘次
出版:教文館
ヤコブと放蕩息子