形而上学(知泉学術叢書46)
形而上学は,存在の根本原理を問う「第一哲学」として語られてきた。コンシュはこれを「現実の全体」についての理性による言説と捉える。何が真に現実的なのか,その全体と人間の位置を問うのである。
「現実」も「全体」も一通りには理解されず,複数の形而上学が成立する。証明には理性に従う限り同意せざるを得ないが,論証には同意も反論もできる。形而上学にあるのは論証であり,立場の選択には自由が残る。ただし,すべての立場が等しく真なのではない。
では,コンシュ自身はどこから思索するのか。彼はモンテーニュを通してコギトの確実性を問い直し,主体の哲学を離れ,無限の現実へと向かう。子供たちの苦しみを論拠に善なる全能の神を退け,無限で永遠なる「自然(ピュシス)」を根源に据える。アナクシマンドロスの無限やヘラクレイトスの生成も,この思索を支える。
「自然」は人間や世界,宇宙をも生み出す源泉であり,人間はその中で思考する存在である。科学が現実の諸側面を解明するのに対し,コンシュは宇宙も含めた現実の全体を問う。この自然主義は唯物論と区別される。「自然」は詩人のように創造し,未来は過去にすべて含まれてはいない。自由や愛も,この創造性から考えられる。
神学への批判は,他者への無条件の愛の否定を意味しない。自説を真と確信しながらも誤りの可能性を認め,哲学を生き方の知恵に還元せず,現実全体の真理を探究する。
本書は,現代フランスを代表する形而上学者コンシュの思索を,その著作の初の邦訳として日本の読者に紹介する。
まえがき
プロローグ
1 哲学者になる
2 哲学者
3 形而上学の概要
4 哲学的自然主義
5 時間,時間性,時間化
1 時間
2 時間性
3 時間化
6 「神」への確かな道(不確実性への確かな道)
はじめに
「神」への確かな道
7 哲学の真理と実在性
エピローグ
補遺
アルノー・プラニョルとの対話
アリオシャ・ヴァルド・ラソフスキーとの対話
ディディエ・ローランスとの対話
出典
訳者解説
マルセル・コンシュ主要著作一覧
訳者あとがき
人名索引
事項索引
著者:マルセル・コンシュ
訳者:矢倉 英隆
ジャンル 哲学・思想
シリーズ 知泉学術叢書
出版年月日 2026/10/20
ISBN 9784862854681
判型・ページ数 新書・274ページ
知泉書館
形而上学(知泉学術叢書46)