進化の中の人間 ヒトの意識進化を哲学する
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宇宙は138億年前のビッグバンにより誕生した。物質の進化の中で太陽系とともに地球が出現し,地球上に生命が誕生する。物質は物理進化から化学進化を経て多くの分子化合物となった。さらに高分子有機化合物が生成されると,海底にはリボ核酸(RNA)やDNAが形成される。その結果,40億年前に生命体となる起源生物が出現した。これが生命の進化の始まりである。起源生物は細胞進化や環境進化,系統進化などにより単細胞から多細胞へと変容し,多くの器官や臓器がつくられ,神経伝達機能の発達とともに多様な自然の生態系が形成された。
進化の中で人間は独自の様相を示している。それは人間が意識をもち思考する生き物になったことである。そのためには二足歩行と言語の獲得が決定的な要因となる。五感により外の世界に触れ,名前を付けることが存在経験となった。生態系の多様化により世界は拡張していき,そこで得た豊富な記憶が人間の文化と文明を展開する基盤となる。好奇心は人間を存在の森へと誘い,古代思想では存在の問題/形而上学が主要な課題になった。「神は在りて在るもの」と語られ,古代インドでは万物はサット(有)から開展し生成されたとされ,学問や宗教の源泉となった。
生命体は基本的に複製と代謝,適応機能を備えて進化を促す。そのメカニズムが進化を支え新たな存在を生み出してきた。本書は先端科学の知見を活用し「進化」を通して人類の未来に新たな知恵を提供する挑戦的な試みである。
まえがき
序論
第一節 進化について
1 古代の発展的世界像
2 科学による宇宙と物質の知
3 科学による生物の知
第二節 存在について
1 存在論における知
2 神学による知と科学の勃興
3 認識論における知
第三節 人間の知における課題
第一章 生物の適応機能についての考察
第一節 生の基本機構
1 細胞の構造
2 生の相互作用
第二節 生物の適応機能
1 外界への働きかけ
2 刺激反応
3 形質変容
4 適応機能の淵源
第二章 進化学上の人類進化
第一節 生物進化
1 生物の多様化
2 進化の形態
第二節 進化における適応機能
1 環境世界と適応機能
2 環境世界における進化と適応機能
第三節 人類進化の特徴
1 意識進化の背景
2 人類の主な意識進化
第三章 人間の意識とは
第一節 生物の適応機構
1 生理的な機構
2 心理的な機構
第二節 人間の心
第三節 人間の意識
1 心の現象としての意識
2 意識の構造
3 言語表現された意識
第四章 世界の存在
第一節 存在の形態
1 諸事物の進化の理由
2 人間進化の中の環境世界
3 人間にとっての存在とは
4 世界存在の様相
5 存在者
第二節 存在の充足理由
1 世界の存在理由
2 諸事物の存在理由
終章
第一節 科学により拡張する経験世界
1 日常世界
2 ミクロ世界
3 マクロ世界
4 今後の経験世界
第二節 科学を取り込む哲学
1 科学の窓
2 人間の知の融合
あとがき
用語解説
参考文献
索引
著者:坂本 充
出版年月日 2024/03/15
判型・ページ数 4-6・310ページ
出版:知泉書館
進化の中の人間 ヒトの意識進化を哲学する