極値問題の理論
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大学院生や最適化問題に関心をもつ研究者に対し,極値問題を三つの観点から統一的に概説した定評の教科書。即ち極値理論の数学的基礎の問題,極値の必要条件,そして解の存在問題を扱う。本書全体を完全に理解するには関数解析の知識が必要だが,多くの内容はより広範囲の読者を対象にしており,最重要な多数の定理は,証明に必要な理解に比べてはるかに少ない数学的素養でその形式を使いこなせるよう教育的に配慮されている。
本書は,バナッハ空間における微分法と凸解析を基礎に,最適性の必要条件の一般原理であるラグランジュの原理を定式化する。最初の六つの章と第10章は極値理論の基礎と最適性の必要条件を扱い,ことに10章では自然科学,工学,経済学,幾何学,解析学,近似理論に登場する異なる極値問題を統一的な手法で考察する。残りの章では,最適性の十分条件と解の存在,凸解析の展開を考察する。
特に17世紀にベルヌーイが開発した変分法は物理学や力学などに貢献したが,第二次世界大戦直前から経済学や工学により提起された問題から,フォン・ノイマンやカントロビッチらにより数理経済学の基礎が作られ,ゲーム理論,数理計画法,ORなどが誕生し,さらに産業・技術活動を制御する最適制御理論へと展開した。今後,数理科学の主要な分析手法の基礎文献として必読書となろう。
日本語版序文
原著者序文
記号の書き方
第0章 序論:背景にある題材
0.1 関数解析
0.2 微分積分学
0.3 凸解析
0.4 微分方程式
0.5 序論の補足
第1章 極小点の必要条件
1.1 問題と基本定理の記述
1.2 滑らかな問題:ラグランジュ乗数法
1.3 凸問題:クーン=タッカーの定理の証明
1.4 混合問題:極値原理の証明
1.5 1章の補足
第2章 変分法・最適制御の古典的問題における極小点の必要条件
2.1 問題の記述
2.2 古典的な変分法の基本問題における必要条件の初等的導出法
2.3 ラグランジュの問題とオイラー=ラグランジュ方程式
2.4 ポントリャーギンの最大値原理,定式化と議論
2.5 最大値原理の証明
2.6 2章の補足
第3章 凸解析の基礎
3.1 凸集合と分離定理
3.2 凸関数
3.3 共役関数とフェンシェル=モローの定理
3.4 双対定理
3.5 有限次元空間における凸解析
第4章 局所凸解析
4.1 同次関数と方向微分
4.2 劣微分,基本定理
4.3 支持汎関数の錐
4.4 局所凸関数
4.5 いくつかの関数の劣微分
4.6 3章と4章の補足
第5章 局所凸問題と相制約付き最適制御問題の最大値原理
5.1 局所凸問題
5.2 相制約付き最適制御問題
5.3 相制約付き最適制御問題の最大値原理の証明
5.4 5章の補足
第6章 特別な問題
6.1 線形計画法
6.2 ヒルベルト空間の二次形式の理論
6.3 古典的な変分法における二次汎関数
6.4 離散最適制御問題
6.5 6章の補足
第7章 極小点の十分条件
7.1 摂動法
7.2 滑らかな問題
7.3 凸問題
7.4 古典的変分法における極小点の十分条件
7.5 7章の補足
第8章 可測多価写像と積分汎関数の凸解析
8.1 多価写像と可測性
8.2 多価写像の積分
8.3 積分汎関数
8.4 8章の補足
第9章 変分法と最適制御における問題の解の存在
9.1 変分法における汎関数の半連続性と下位集合のコンパクト性
9.2 解の存在定理
9.3 たたみ込み積分と線形問題
9.4 9章の補足
第10章 理論の諸問題への応用
10.1 幾何光学の問題
10.2 ヤングの不等式とヘリーの定理
10.3 振動子の最適励起
10.4 10章の補足
第11章 問題
11.1 問題
11.2 問題の補足
11.3 問題へのコメント
訳者あとがき
参考文献
索引
A.D. イオッフェ 著
V.M. ティコミロフ 著
細矢 祐誉 訳
虞 朝聞 訳
出版:知泉書館
極値問題の理論