意思決定理論

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本書は意思決定理論における基本的トピックについて証明と解説をし,公理的方法の「基本動作」を習得することを目的とする意思決定理論の教科書である。基本動作とは,モデルの直接観察可能な事柄を確定し,観察により公理を直接検証可能な命題に表現し,さらに公理系が含む意味を表現定理の形にすることである。

意思決定理論での公理には二つの役割がある。

まず「意思決定とはいかにあるべきか?」という規範的議論。ここでは「合理性」の基準を明確にし,推移性の公理により首尾一貫性としての「合理性」を考察する。

次に「人は実際どのように意思決定するのか?」という事実解明的な議論。ここでの公理の役割は選択行動を観察して,直接検証可能な性質を明らかにすることである。推移性の公理により,実際に人間の選択行動が持っていると想定される性質を検討する。人間の選択に形式的な法則性を見出すのは難しいが,選択の性質を公理という独立した命題の形で表現することにより,理論をできるだけ直接反証可能なものにする。

規範的議論における公理の役割は比較的明瞭であるが,事実解明的議論では注意深い留保条件が必要となる。最終的には,公理的分析によってこの公理を満たす意思決定方式が,ある種の関数の最大化として表現される。

はじめに

第1章 選好とその表現
 1.1 選好関係
 1.2 選好の表現

第2章 顕示選好
 2.1 弱順序の最大化による合理化可能性
 2.2 全順序の最大化による合理化可能性

第3章 多項目からなる選択肢と分離性

第4章 危険下の決定基準
 4.1 危険回避と期待効用理論
 4.2 期待効用理論の公理的特徴付け
 4.3 期待効用表現定理
 4.4 非単純くじ上の期待効用
 4.5 比較危険回避
 4.6 期待効用は「基数的」か?
 4.7 非期待効用選好と動学的整合性

第5章 不確実性下の決定基準と主観的信念
 5.1 Savageの主観的期待効用理論
 5.2 主観的信念の頑健な定義
 5.3 Anscombe-Aumannの主観的期待効用理論

第6章 信念のあいまいさ
 6.1 Ellsbergの逆理
 6.2 Gilboa-Schmeidlerのmaxmin期待効用理論
 6.3 Schmeidlerの非加法的主観的期待効用理論
 6.4 比較曖昧さ回避
 6.5 2階の信念と曖昧さ回避
 6.6 情報と信念

第7章 信念の改訂と動学的整合性
 7.1 主観的確率の改訂
 7.2 あいまいな信念の改訂

第8章 流列の決定基準
 8.1 確実性下の流列
 8.2 危険下の流列
 8.3 危険下の再帰的効用(Kreps-Porteus/Epstein-Zin)
 8.4 不確実性下での流列の決定基準

第9章 機会の選択基準
 9.1 「合理的」な機会の選択基準
 9.2 誘惑と自制の理論
 9.3 柔軟さへの選好と「主観的な状態集合」

第10章 情報と知識
 10.1 可能性対応
 10.2 知識作用素
 10.3 共有知識
 10.4 不知はモデル化できるか?

第11章 不確実性下の社会的意思決定
 11.1 危険下での社会的意思決定
 11.2 不確実性下での社会的意思決定
 11.3 事前パレート基準と社会的決定の状態依存性
 11.4 パレート条件を弱める
 11.5 事前アプローチと事後アプローチの可換性

参考文献
索引

著者:林 貴志
出版:知泉書館

2020/5

意思決定理論

4,950円(本体4,500円、税450円)

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