よくわかる新約聖書の世界と歴史
-
新約聖書全体の見取り図とその成立過程をコンパクトにわかりやすく叙述。いわゆる「新約聖書入門書」にとどまらず、現代に生きる私たちがどのように新約聖書を読み、そのメッセージを受け取るかを常に問いかけていく著者の視点が新鮮な一冊。図版や資料も豊富に収録。
【目次】
まえがき
「よくわからない」新約聖書/『新約聖書』という書物/
不安と苦難の時代に生まれた生命の結晶/
信仰の書・歴史的な古文書
第1章 『聖書』全体の見取り図
聖なる書?/聖書・生書・政書・正書・性書/
イエス・キリストに集中/新約聖書の多様性/
新約聖書はなぜ日常のギリシア語で
第2章 ギリシア文化は大波のように(紀元前300年代以降)
1節 ギリシア人(ヘレネス)化の現象
アレクサンドロス王の登場/諸国民のギリシア人化/
言語・文化の侵略/ダイナミックスの世界/
国際都市アレクサンドリア
2節 マカバイ独立戦争(紀元前200年代以降)
アレクサンドロス王の死/重税と納税拒否/
「現人神」の登場/宗教弾圧と迫害/
指導者ユダ・マカバイ――「わたしに続け」
3節 ユダヤ独立国家の誕生
エルサレム神殿奪回/皮肉な結果
第3章 ローマ帝国とヘロデ大王(紀元前65年以降)
1節 ローマ帝国とヘロデ政権
ローマ帝国の登場/ローマの圧政/ヘロデ家の支配体制
2節 ヘロデ王朝の時代
ガリラヤのヘロデ/ヘロデ王朝の誕生
3節 ヘロデ長期政権の基盤
ヘロデの手腕/ヘロデの政治・経済政策
4節 ヘロデ大王と女性たち
古代ユダヤ社会の一夫多妻/ヘロデの結婚と猜疑心
5節 ヘロデの晩年と農民たちの抵抗
ヘロデの権力欲/水面下からの爆発
第4章 新約聖書が生まれる舞台(イエス時代前後)
1節 ユダヤ教の多様性
不安と危機の中で――ユダヤ教諸派の源流/サドカイ派/
ファリサイ派/エッセネ派/熱心党(ゼロテ党)
2節 イエスの先駆者たち
暴動鎮圧と人々/ヘロデの三人の息子/洗礼者ヨハネ
3節 イエスの世界・パウロの世界
イエスが生きた世界/イエスと人々との触れ合い/
イエスと共に宣教した人々/パウロが生きた世界/
パウロの伝道方式
第5章 イエスからキリストへ
――パウロの手紙とマルコによる福音書(紀元30年代以降)
1節 語り・聞く世界――イエスと口頭伝承
宣べ伝える者が宣べ伝えられる者に/想い起こし/語り部と聞き手
2節 パウロの手紙
「手紙」という形/なぜパウロの手紙は残されたのか/
伝道旅行の中で
3節 イエスの伝承と「マルコによる福音書」
イエスの諸伝承とテーマ別のまとめ/失われた福音書/
ひとつの事件――「マルコによる福音書」の誕生/
マルコという著者/「批判的福音」
第6章 原始キリスト教とマルコ以後の福音書(紀元50年代以降)
1節 原始キリスト教のあらまし
三つの流れ/エルサレム教団の二つのグループ
2節 ユダヤ独立戦争と初期カトリック教会
ローマ・ユダヤの支配に対する抵抗運動/ユダヤ独立戦争/
神殿炎上/初期カトリック教会の誕生
3節 マルコによる福音書に続く福音書
マタイによる福音書/なぜ別の福音書?/
ルカによる福音書と使徒言行録/ルカの見つめていた世界/
貧しい者・女性たちの福音書?/ヨハネによる福音書/
「反ユダヤ主義」をめぐって
第7章 キリスト教迫害――パウロ以後の文書(紀元80年代以降)
1節 「主にして神」
ローマ皇帝礼拝をめぐって/皇帝を頂点とする社会体制/
キリスト者に対する庶民感情/家の教会
2節 迫害のもとに生まれたパウロ以後の文書
パウロの名前を借りた手紙/教会の組織化と父権制化/
ヨハネの手紙
3節 慰めと励ましのメッセージ
疲れ果てるキリスト者と教会へ――ヘブライ人への手紙/
「公同の書簡」と呼ばれる手紙/新天新地の幻――ヨハネの黙示録
第8章 新約聖書「正典」の成立
1節 「正典」成立に働いた力
神の働きによる「正典」/初期キリスト教会の課題/
「正典」作成のきっかけ――マルキオンの「正典」
2節 「正統」と「異端」の問題
キリスト教の弁証家・護教家/
初期キリスト教の信仰的・教会政治的な力学/
「正統」によって作られた「異端」
3節 「正典」成立の道
「正典」成立史における「七疑書」/「正典」の枠づけ
あとがき
山口 雅弘:著
四六判 並製 200ページ
出版:日本キリスト教団出版局
よくわかる新約聖書の世界と歴史