トールキンによる福音書　中つ国における〈神の国〉のヴィジョン

20世紀最大のファンタジー『指輪物語』の作者であり、敬虔なカトリック信徒としても知られるJ.R.R.トールキン。一見異教的である彼の作品の中に、忠実に再現されたキリスト教的世界観を丹念に読み解き、「キリスト教作家　トールキン」の実像を浮き彫りにする。

【目次】

　　凡例／日本語版への序文／まえがき／序論

第一章　創造の偉大なシンフォニー
　　生命の起源と目的
　　運命（Fate）、死、破滅的終局（Doom）の遍在
　　自然の秩序の本質的な善
　　身体的な慰安の歓び
　　ゆっくりと成長する事物のすべて、
　　　　とくに樹木に対するトールキンの愛好
　　善なる魔法と邪悪な魔術
　　話す能力という最高の贈り物
　　イルーヴァタールの宇宙の贖罪的なヒエラルキー
　　中つ国の歴史に関する道徳的難問
　　〈探索〉の生への招き

第二章　悪の惨禍――神のハーモニーの損傷
　　孤独なメルコールの反逆
　　自己自身を貪り食らう悪
　　サウロンの眼とガラドリエルの鏡
　　　　――偽りのヴィジョンの誘惑
　　悪徳よりもはるかに美徳に訴えかける悪
　　長寿の魅力と不可視への願望
　　〈一つの指輪〉の強制力

第三章　悪に対する抵抗――トールキンの道徳的人生観
　　知恵と賢慮――自己犠牲を促す諸徳
　　名声とロマンスの問題における浅慮の結果
　　賢慮、知恵、道徳的成長
　　賢慮の限界と自己放棄による犠牲の「愚かさ」
　　正義――憐れみを必要とする徳
　　安全で満足した人々のひとりよがり
　　戦争の必然性と限度
　　正義の無分別と憐れみおよび服従への招き
　　勇気――忍耐を生む徳
　　英雄的な気高い勇気
　　恐れを知らぬことの危険
　　希望に満ちた忍耐に変容した勇気
　　節制――快い克己をもたらす徳
　　肉の欲とフロドとサムの自己否定
　　目の欲とデネソールの敗北主義
　　生活のおごり、死の恐怖、妥協の拒否

第四章　永続的な矯正――トールキンの贖罪的人生観
　　信頼としての信仰と友情
　　信仰への人間の招きと信頼
　　神の助けを嘆願し受け入れる信仰
　　友情を生み出す信義
　　疑念の危険と友情の損傷
　　永久に善である未来に対する希望
　　真の王の帰還によってもたらされる希望
　　この世を超えたところにある希望
　　赦す愛

第五章　完成――中つ国の傷が癒されるとき

　　関係書目／謝辞／訳者あとがき／索引

ラルフＣ．ウッド：著　
竹野一雄：訳

A5判上製 274ページ

日本キリスト教団出版