イエスの十字架の死 史実から物語へ
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イエスの十字架の死という「史実」が、どのようにして各福音書の神学的メッセージを含んだ「物語」へと形作られていったのか。過去の福音書研究の成果に基づき、その解釈の変遷を明らかにし、背後にある原始キリスト教団の持つ多様性や独自性を浮き彫りにする。
【目次】
序 主題と全体的構成
第一部
イエスの十字架の死――福音書における叙述比較
Ⅰ イエスの死の場面
1 共観福音書
第1章 イエスの十字架の死についての一考察
――マルコ福音書15章33-39節の釈義を中心として
第2章 マタイ福音書におけるイエスの十字架の死
――マルコ福音書15章33-39節と
マタイ福音書27章45-54節との比較
第3章 ルカ福音書におけるイエスの十字架の死
――マルコ福音書15章33-39節と
ルカ福音書23章32-48節との比較
第4章 マタイ福音書27章51b-53節におけるイエスの死の意味
――マリア・リーブルの解釈を中心に
2 ヨハネ福音書
第5章 ヨハネ福音書におけるイエスの十字架の死
――ヨハネ福音書19章16b-30節の資料問題
第6章 イエスの十字架の死とユダヤ人の王モティーフ
――ヨハネ福音書18章33-38節aの解釈
Ⅱ 埋葬物語
第7章 イエスの十字架の死と埋葬物語
――マルコ福音書15章42-47節の解釈
第8章 イエスの十字架の死と埋葬物語
――ヨハネ福音書19章31-42節の解釈
第二部
イエスに対する信従と拒絶――受難物語における二つの姿勢
第9章 イエスの十字架の死と塗油物語
――マルコ福音書14章3-9節の解釈
第10章 マルコ福音書受難物語における女たちのモティーフ
――モニカ・ファンダーの解釈を中心に
第11章 ルカ福音書における塗油物語
――ルカ福音書7章36-50節の解釈
第12章 ペトロの否認告知と信従モティーフ
――マルコ福音書14章26-31節の解釈
第13章 イエスの十字架の死と最高法院における裁判
――マルコ福音書14章55-64節の解釈
第三部
使徒言行録におけるイエスの十字架の死
第14章 信従の模範としてのイエスの十字架の死
――使徒言行録7章54-60節の解釈
第15章 使徒言行録におけるイエスの十字架の死
――キリスト論的ケリュグマとルカ福音書23章
結 史実から物語へ/参考文献/初出一覧/あとがき
【著者紹介】中山貴子(なかやま・たかこ)
1944年新潟県に生まれる。1967年関西学院大学神学部卒業。
1969年同大学大学院神学研究科修士課程修了(新約聖書学専攻)。神学修士。同年広島女学院大学文学部助手、日本基督教団西中国教区教務教師に就任。1994-1995年在外研修(ミュンヘン大学福音主義神学部)。広島女学院大学文学部教授としてキリスト教学、ジェンダー関連科目を担当、また文学部宗教主任、大学宗教部長としてキリスト教教育活動に従事。専門は福音書研究、主要論文等は本書に所収。2014年逝去。
出版:日本キリスト教団出版局
イエスの十字架の死 史実から物語へ