牧会学入門
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牧会とは、私たちの人生が形づくる「個人の物語」を、「キリスト教の物語」へと結びつける働きである──。牧会の歴史、理念、実践を総合的に論述。従来の「心理療法」的視点を乗り越え、「物語の解釈」という新しい視点から牧会を理解しなおすことを目指す。
【目次】
謝辞
はじめに
著者と読者の対話
読者としてあなたがこの対話の中に持ち込むもの
著者として私がこの対話の中に持ち込むもの
◎第一部 牧会の歴史と新たな方向──継続と変革
第一章 牧会史の概説
牧会の聖書的モデル
キリスト教史の各時代における牧会
・原始教会
・迫害の時代
・コンスタンティヌス以降の帝国の教会
・ローマ帝国の滅亡とヨーロッパにおけるキリスト教の拡大
・中世のサクラメント至上主義
・宗教改革の時代
・啓蒙主義
・任意主義と信仰の私事本位主義の時代
第二章 二十世紀の牧会
十九世紀から二十世紀へ(1)──宗教心理学運動の影響
十九世紀から二十世紀へ(2)──「自我」と牧会的な癒やしの再発見
フロイトとフロイト派の心理分析の影響
社会的福音運動
アントン・ボイセンと臨床牧会教育運動の始まり
臨床牧会教育の成熟
牧会と牧会カウンセリングの学問的探究
ロジャーズ派以降の牧会
一九七〇年代及び八〇年代の牧会
──個人へのカウンセリングか、共同体とその伝統に対するケアか
ケアの伝統におけるパターンの変化
──牧会とポストモダンの神学
第三章 牧会における新たな方向
古代イスラエルの遺産
──祭司・預言者・賢者としての牧師
羊飼いとしての牧師
仲介者及び和解を促す存在としての牧師
牧会とサクラメント
──祭儀の指導者としての牧師
牧会と会衆の道徳的生活
牧会と霊的生活
私たちが受け継ぐべき二十世紀の遺産は何か
個人の内面の生を聴きとる牧会
特別なニーズのもとにある人々への牧会
個人と社会的状況に対する牧会的関心
会衆のための牧会、会衆の中での牧会
牧会的教育としての牧会
第四章 私たちの人生とキリスト教の物語
オルグッド夫妻の事例の再考
変化の必要を示す時のしるし
(一)社会における人間的苦難の多様性とレベルに見られる変化
(二)教会共同体が直面する問題の性格における変化
(三)牧会の実践に影響を及ぼすことになった神学上の変化
神学的営みに関するアプローチの類型
「文化─言語型モデル」と牧会
解釈上の導き手としての牧師
◎第二部 牧会とは何か──キリスト者の共同体の物語に対するケア
第五章 「解釈上のリーダーシップ」としての牧会
牧会の多元的な性格
会衆の生における多元性
・「言葉の共同体」
・「記憶の共同体」
・「探求する共同体」
・「相互にケアをする共同体」
・「宣教の共同体」
第六章 多様な共同体が存在する世界の中でのキリスト者の共同体
多元主義と相対主義の世界において信仰を守るということ
牧会の実践に対する神学的省察
牧師自身が体験する多元主義と相対主義
多元主義の時代における牧会
◎第三部 牧会の実践とライフサイクル
──キリスト教の物語、個々人の物語、そして家族の物語
第七章 幼少年期と牧会
──人生の始まりにおける物語
想起への招き
キリスト教共同体における幼児洗礼
子どもの誕生の際の人間的な諸問題
牧会はつねに「問題中心的」であるべきなのか
問題を抱えた社会的動向と牧会
(一)共稼ぎの夫婦の家庭
(二)シングルの親と子どもから成る家庭
(三)子どもへの虐待
第八章 思春期と牧会
──成長、自立、自覚的な他者との結びつき
思春期の移行に関わる基本的課題
(一)家族の歴史に根ざす課題を解決するにあたって
(二)性とジェンダーのアイデンティティを
確立するという課題
(三)親密な人間関係の探求
(四)共同体の探求
思春期の人々に関わるキリスト教共同体の働き
青年たちへの牧会における任職された牧師の課題
(一)教会共同体のリーダーシップ
(二)キリスト教的伝統を明確に表現すること
(三)青年の置かれた社会的状況に関わる
牧会上のリーダーシップ
(四)青年の導き手、助言者、仲介役としての牧師
第九章 壮年期と牧会
──ジェンダーの相違、次世代の育成、破綻した関係
性的関心、ジェンダーの相違と牧会
・ハリントン夫妻の事例
・ラシター夫妻の事例
次世代の育成への関わりと牧会
・アル・ブラウニングの事例
破綻した関係と牧会
第一〇章 高齢期と牧会
──信仰共同体と高齢者の牧会
私の加齢の経験
老後の生き方に関する大まかな類型
(一)継続性を重んじる生き方
(二)職業や居住地を一新する生き方
(三)隠遁という生き方
(四)英雄的に年を重ねる生き方
(五)悲劇的に年を重ねる生き方
牧師と教会共同体による、高齢者への牧会
第一段階 「高齢初期」の人々への牧会
第二段階 「高齢中期」の人々への牧会
第三段階 「高齢後期」の人々への牧会
若干の牧会的神学的省察
第一一章 牧会と人生の儚さ 320
人生の儚さという意識
人生の儚さの様々な次元の探求
・キリスト教の伝統における究極的真理の理解
・複雑な文化的圧力
・個人、家族、共同体
痛みと牧会
──人生の儚さというヴィジョンに対するふたつの視点
牧会の働き
・牧会の第一の段階
個人と家族に対する危機カウンセリング
・牧会の第二の段階
記憶する共同体の保持
・牧会の第三の段階
キリスト者の共同体やその他の共同体の構築
・牧会の第四の段階
神学的省察における牧会のリーダーシップ
チャールズ V.ガーキン:著
越川 弘英:訳
A5判 上製 402ページ
ISBN978-4-8184-0797-8 C3016
2012年01月30日
日本キリスト教団出版
牧会学入門