グノーシス研究拾遺 ナグ・ハマディ文書からヨナスまで
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拾遺（今まで漏れ落ちていたものを拾い集めて補うこと）――これほど似つかわしい言葉があろうか。
グノーシス主義の探究は新約聖書研究にとって不可欠・不可分の関係にあるとの信念から日本のグノーシス研究を長く牽引してきた著者が、ナグ・ハマディ文書の全体像からH・ヨナスの労作『グノーシスと古代末期の精神』までを改めてつぶさに逍遥し、グノーシス研究の道行きに散りばめられていた智の欠片を拾い集めた待望の書。
重要なのは、その神々の頂点にいる至高神が、たとえどのような名前で表記されようと、実は人間のもともとの本来の在り方を指す別名であることを見抜くことである。グノーシス神話は絶対的な人間至上主義にほかならない。人間こそが至高神であれば、それを超えるものは何もない。グノーシス神話の謎を解く鍵はただ一つ、どうして人間は至高の神の一部でありながら、間違った居場所へやってきてしまったのか? そもそも間違った場所とは何のことなのか? この一点から読むことである。 （本文より）
主な目次
はじめに
凡例
�機〇笋離哀痢璽轡晃Φ� ―― 序にかえて
1 修学時代（1970 ― 1980年）
1 ― 1 荒井献ゼミ（1970 ― 1974年）
1 ― 2 ドイツ留学（1974 ― 1979年）
ヴュルツブルク大学（1974 ― 1976年）
ミュンヘン大学（1976 ― 1979年）
2 ナグ・ハマディ文書の翻訳
2 ― 1 私訳の蓄積
2 ― 2 『ナグ・ハマディ文書 �� ― �検戞�1997 ― 1998年）の刊行
3 『グノーシスの神話』と論文集の刊行
3 ― 1 『グノーシスの神話』（1999年）
3 ― 2 『グノーシス考』（2000年）
3 ― 3 『ロゴスとソフィア―― ヨハネ福音書からグノーシスと初期教父への道』（2001年）
3 ― 4 『グノーシス 陰の精神史』と『グノーシス 異端と近代』（編著2001年）
4 歴史的心理学からグノーシスの政治学へ（2007 ― 2010年）
4 ― 1 歴史的心理学
4 ― 2 『グノーシス「妬み」の政治学』（2008年）
5 『グノーシスの変容』（編訳2010年）
6 ハンス・ヨナス『グノーシスと古代末期の精神�� ― �供戮遼殘�（2015年）
7 エイレナイオスとヒッポリュトスの原典訳（2017 ― 2019年）
8 八木 ― 荒井論争を超えて ― 結びにかえて
9 本書の収録論考について
�供 愡杏瑤龍気─戞�NHC I,5）の三層原理
�機，呂犬瓩�
�供 屮廛譟璽蹇璽沺廚涼罎了袷惺渋�
1 「父性のプレーローマ」
2 「父」・「御子」・「アイオーンたちの教会」の三層構造
3 「プレーローマ（アイオーンたち）の教会」内部の三層構造
4 まとめ
�掘〆蚤腟�模の三層構造 ―― 「上のプレーローマ」・「ロゴスのプレーローマ」・「経綸」の成立
1 「物質的な者たち」
2 「心魂的な者たち」
3 「ロゴスのプレーローマ」と「霊的な者たち」
�検｜羇峙�模の三層構造 ―― 「霊的な者たち」・「心魂的な者たち」・「物質的な者たち」について
1 「心魂的な者たち」と「物質的な者たち」の位階制
2 「心魂的な者たち」の内部の位階
3 最下位の「経綸」について
�后〆撚式未了袷惺渋� ― 「霊的秩序」・「心魂的秩序」・「奴隷の秩序」
1 「奴隷の秩序」
2 「物質的な者たち」の中に下降した「霊的秩序」
3 「物質的な者たち」の中に下降した「心魂的秩序」
�此，泙箸�
�掘．肇泪絞＿蚕餮賚深啓靴肇哀痢璽轡梗腟舛離▲縫潺坤燹宗� ナグ・ハマディ文書の中のマニ教的なもの
�機〔簑蠶鶺�
�供 嵌謄�リスト論」的再解釈は何時行われたのか
�掘．肇泪后Ε灰廛噺賁�者の「汎キリスト論」の中身
1 シリア・エジプト（＝西方）型の場合
2 マニ教（＝東方型）の場合
Ａ マニ教におけるアニミズムの成立根拠
Ｂ マニ教のアニミズムについての証言
Ｃ 語録七七のマニ教的読解の可能性
Ｄ 「マニ教以前」か「マニ教以後」か
�検．灰廛噺譽肇泪絞＿蚕颪凌析地静�統一性の問題 ― 結びにかえて
�検．好肇△両霰囲世肇哀痢璽轡� ― ヨハネのアポクリュフォン § 51―54（NHC �供砲砲�ける反ストア的編集について
�機）槓犬遼殘�と問題設定
�供）槓検福� 51―54）に関する文献学的分析
�掘仝泥好肇�学派の情念論
�検仝泥好肇�学派の情念論の影響史
�后 悒茱魯佑離▲櫂�リュフォン』§ 51―54の情念論 ― むすび
�后．哀痢璽轡垢諒冤� ―― 物語論から体験論へ
はじめに
�機．魯鵐后Ε茱淵垢僚蠕癲�
�供［永櫃判だ機�
�掘 悒勝璽好肇螢▲離后戞�NHC VIII, 1）
1 写本と内容について
2 「私にとっての実行可能性」 ― 存在論的行為としての覚知
3 啓示の内容 ― 存在論
4 神話から「存在の純粋な内在的法則」へ
�検．廛蹈謄�ノスの批難
1 ポルピュリオスが証言する『ゾーストリアノス』
2 プロティノスは『ゾーストリアノス』の何を拒絶するのか
�后）盻冓現颪砲�ける「呪文」
�此／脆觴腟租�グノーシスと「異言」（グロッソラリア）
�察，爐垢�
�此．魯鵐后Ε茱淵后悒哀痢璽轡垢噺殿緞�期の精神』を読む
はじめに
�機．茱淵垢鯔殘�しての最大の発見
�供．茱淵垢鯑匹澆覆�ら抱いて来た最大の疑問
�掘．丱轡螢如璽糠匹領祿粟�
�検，泙箸�
�后〇核榜杙瓩離灰瓮鵐箸悗留�答
研究者名索引
引照箇所索引
あとがき
著者：大貫 隆（おおぬき・たかし）
1945年静岡県浜松市生まれ。1968年一橋大学卒業、1972年東京大学大学院人文科学研究科西洋古典学専攻修士課程修了、1979年ミュンヘン大学神学部修了・神学博士、1980年東京大学大学院博士課程（前記）単位取得退学、東京女子大学専任講師、1991年東京大学教養学部助教授、2009年同名誉教授、自由学園最高学部長（― 2014年）。
主な著作：『世の光イエス ― ヨハネ福音書のイエス・キリスト』、講談社、1984年（改訂増補版：日本基督教団出版局、1996年）、『グノーシスの神話』岩波書店、1999年（講談社学術文庫2014年）、『グノーシス考』岩波書店、2000年、『ロゴスとソフィア ― ヨハネ福音書からグノーシスと初期教父への道』教文館、2001年、『グノーシス「妬み」の政治学』岩波書店、2008年、『終末論の系譜 ― 初期ユダヤ教からグノーシスまで』筑摩書房、2019年、『イエスの「神の国」のイメージ ― ユダヤ主義キリスト教への影響史』、教文館、2021年、『ヨハネ福音書解釈の根本問題 ― ブルトマン学派とガダマーを読む』ヨベル、2022年、他多数
出版社: ヨベル
2023年6月
判型: 四六
ページ数: 352
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