存在の一義性 ヨーロッパ中世の形而上学 (知泉学術叢書9)

  • 存在の一義性 ヨーロッパ中世の形而上学 (知泉学術叢書9)
ドゥンス・スコトゥス(1265-1308)の「存在の一義性」について,難解とされるテキストの忠実な翻訳と段落ごとに初学者向けの懇切な解説を付した画期的業績である。
スコトゥスとの関連で「存在の一義性」は必ず触れられるが,わが国のみならずヨーロッパにおいてもこの概念が正確に理解されることはほとんどないのが現状である。
ギリシア以来の形而上学の探求は,13世紀にトマスにより大きく展開されたが,14-15世紀の二世紀に及ぶ飢饉やペストの影響で社会や学問が衰退し,〈暗黒の中世〉として中世の学術文化は近代へと正当には継承されなかった。
そのためデカルトやカントによる近代哲学の形成という哲学史的認識が今日に至るまで定着し,『方法序説』や『純粋理性批判』の主題が,スコトゥスによる中世最後の形而上学ですでに扱われていたことは知られていない。
スコトゥスは「記憶」を個人的記憶である〈個別的な記憶〉と,知識を学ぶ〈学習済みの知〉(所有 habitus)に区別する。彼は前者の「わたし」によってのみ経験された個別事象の記憶こそが,知性に属する真正の記憶であるとして,知性の記憶・想起の論を展開,「存在の一義性」という独自の概念に到達した。哲学史上この種の記憶は感覚的なもので,知性には属さないと一貫して否定されてきたのである。新たなヨーロッパ学の扉を開く必読の書。

著者:ドゥンス・スコトゥス
出版:知泉書館

2019年7月25日

存在の一義性 ヨーロッパ中世の形而上学 (知泉学術叢書9)

7,700円(本体7,000円、税700円)

購入数

カテゴリーで選ぶ

モバイルショップ